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【PS4・Switch】「レイジングループ」の感想・レビュー。人狼をテーマにした密度の濃いノベルゲーム【ADV】

こんにちは。なかやんです。

今回、2017年3月にPS4でリリースされた「レイジングループ」をプレイしたので、感想・レビューを書いていきます。

総プレイ時間は約30時間です。

「レイジングループ」ってどんなゲーム?

レイジングループは、ケムコが開発した、人狼ゲームを題材としたノベルゲームです。

ケムコはガラケーのゲームからゲーム開発を始めた、ゲーム会社としては割と古い企業ですが、近年は特にノベルゲームに力を入れており、ディレクターの「amphibian」氏が手がける、ミステリ色の強いストーリーが人気を博しています。

レイジングループはもともとアプリゲームとして2015年にリリースされた作品で、口コミにより評価を高め、ケムコのノベルゲームを現在の地位に押し上げた出世作と言えます。

その後、2017年にPS4とSwitchに移植されました。

僕はアプリ版をプレイしていないのですが、個人的にはUIの観点やストーリーの長さから、コンシューマ版の方がプレイしやすいのではないかと思っています。

内容としては冒頭に述べた通り、人狼ゲームを題材としたサイコホラー・ミステリとなっています。

わかりやすく言うと、「現実に人狼ゲームが存在するとすれば、どうなるのか」というのを描いた作品となります。

あくまで人狼ゲームを題材としているだけであり、プレイヤー(読者)が実際にCPU相手に人狼ゲームを繰り広げる訳ではない、という点には注意が必要です。(ただし、誰に投票するかなどを選択する場面はあり)

題材が似ているという点で「グノーシア」と比較されがちですが、ゲームシステムは全く異なります。

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ただし、それだから物足りないという訳では全くなく、非常に続きが気になる章立てやプレイヤーも推理しながら読み進める楽しさがあるノベルゲームです。

人狼ゲームのセオリーが通じない、「人狼ゲーム」

レイジングループのあらすじは、バイク旅行中に休水(やすみず)という集落に迷い込んだ主人公の房石陽明(ふさいし はるあき)が「黄泉忌みの宴(以下:宴)」という人狼ゲームに巻き込まれていくというものです。

このゲームの面白いところは、現実世界でもし本当に人狼ゲームが行われれば、こうなるかもしれない、というところを描いている点です。

宴の参加者は、主人公以外に休水の住民と、休水の近隣地区出身の支配階級にあたる長者たち、そしてたまたま現地の食文化を取材に来ていた記者とカメラマンなど、老若男女様々です。

宴には近親者同士も混ざっているため、混迷を極める

その中に潜む複数の人狼(おおかみ)を見つけるために、加護(人狼ゲームでいう、占い師や霊媒師のような能力)を用いて、くくる(吊る)対象を宴で決めていきます。

被差別地域にあたる休水の住民と長者たちは、宴が始まる前からすでに長年の確執があり、閉鎖的な因習から、よそ者の主人公や記者・カメラマンにも辛く当たります。

そういった様々な背景が入り混じり、混沌を極める中で主人公は宴を生き残らなければなりません。

通常のいわゆる人狼ゲームをやったことがある方ならわかるかもしれませんが、人狼ゲームにおいてプレイヤーのバックグラウンドを加味した考察をする、「メタ推理」はルールに反しているとも取られます。

また、作中では宴はゲームではなく、吊り対象にされれば死んでしまう、まごう事なき殺人行為です。

たとえ自分の死が味方陣営に利することがあっても、主人公は死を避けねばなりません。

例えば、自分が真占い師の時に、おおかみ陣営の1人が占い師を騙って先にカミングアウトしているのにも関わらず、生き残るために自分の役職を隠して議論を進める場面なども出て来ます。

これは、通常の人狼ゲームの進行においてはセオリー通りとは言えないでしょう。

さらには、人狼ゲームの根幹を揺るがす、ルール外の殺人、つまり宴による処刑とおおかみの襲撃以外の殺人も起こります。

当然、ルール外の殺人は文字通りルール違反です。

ルールを違反したものには超自然的な力による惨たらしい死(ゲーム内でいう「けがれ」)という罰があるのですが、このルール外の殺人が当たり前に行われるというのは、人狼ゲーム的にあまりにも予想外の展開と言えます。

しかし、極限状態に陥った人間や、追い詰められたおおかみが自滅覚悟でルール違反をしてでも宴を終わらせにかかる、というのは、ゲームではない「殺し合い」だからこその発想と言えます。

人狼ゲームの攻略には論理的思考が伴いますが、宴という「殺し合い」は理論的かどうかはさほど重要ではなく、理性や倫理が無視されるということです。

こういった、本来の人狼ゲームのセオリーをあえて無視した作りにすることで、ゲームではなく殺し合いである、と登場人物に、ひいてはプレイヤーにも刷り込んでいくギミックの面白さがあります。

伝奇物としての完成度の高さと世界観の作り込み

前述の通り、宴の要素はあくまでレイジングループを構成する一つに過ぎず、主人公の目的は「黄泉忌みの宴」とは一体なんなのか、そして休水に隠された秘密とはなんなのかを解き明かすことです。

ここには山岳信仰や神話、そして世間から隔絶された山奥の村にいかにもありそうな古い習わし等が複雑に絡み合い、難解な物語を形成しています。

これに加えて、宴による精神的疲弊や疑心暗鬼も合間って、狂気と化す登場人物たちの描写など、オカルト・サスペンスが好きな人はもちろん、そうでない人にとっても納得の完成度と作り込みがなされています。

あえて別のゲームで雰囲気を例えるならば、「ひぐらしのなく頃に」や「SIREN」のような舞台設定が好きな人なら間違いなくハマれるゲームでしょう。

また、レイジングループというタイトルが表す通り、このゲームはいわゆるループもので、主人公は「死に戻り」を繰り返し、真の謎に迫っていきます。

明らかになる謎は小出しにされるので、次のループで物語にどのような影響があるのか、ついつい先が気になる作りとなっており、プレイヤーを飽きさせません。

レイジングループの気になる点

ここからは問題点というか、プレイしていて気になった点をあげていきます。

主人公に愛着をいだきにくい

レイジングループでは、ドワンゴが運営する声優学校に所属する声優さんがキャラクターの声をあてています。(地の文以外は全てボイス付き)

ほとんどのキャラクターは、キャリア間もない声優さんが声をあてていると思えないほどの好演を見せているのですが、主人公の房石陽明に限って、演技のムラがすごく、棒読みが目立ちます。

抑揚のない棒読みの後に「と、僕は叫んだ」という地の文が続くなど、頓狂な声調のせいでシリアスな場面にそぐわないこともあったりします。

ただ、主人公は他者から心情がなかなか読めないという役回りでもあるため、それでいいのかなとも思いますが、度々気になる点です。

また、自らが他人と比べて歪んでいるのを自覚しているというキャラ設定なのですが、それを裏付けるための自分がいかに歪んでいるかアピールが終盤うざったく感じる局面があります。

さらに、これは物語上仕方ないのですが、ループごとに違う女性ヒロインと懇ろになり、しかもそれを認知しながら臆面もなく受け入れるという気が多い面があり、人間的に好きになれない点が目立ちます。

つまり癖の強い主人公ということになるのですが、人によって好き嫌いが別れる点だと思います。

ギャグ要素の良し悪し

ここもノベルゲームにはよく問題点として取り上げられるもので、ストーリー中に差し込まれるギャグが自分の感性に合うか合わないかというものです。

レイジングループは序盤の掛け合いにギャグじみた物が多く、(中盤・終盤かなりシリアスになるので、あえて序盤はそのようにしてるのかもしれませんが)ギャグセンスが合わないと少し辛い物があります。

ここも賛否両論が別れる点でしょう。

やや強引に感じる風呂敷畳み

重大なネタバレを避けるため、詳しくは伏せますが、不可思議な「黄泉忌みの宴」の秘密を理屈をもって解決する場面に、やや強引さを感じました。

また、結局理屈で片付かない超常現象的なものも事件のファクターに取り入れられている点は、腹落ちしない人もいるでしょう。

ですが、山岳信仰や休水の秘密など、伝奇的な部分に関しては、非常に設定が練りこまれており、見事の一言と言えます。

テーマの新規性、緻密な設定作成、ノベルゲームとしては傑作

ノベルゲームというものは、アクションゲームやRPGと異なり、ゲームとしての面白さの評価が全て(または大半が)「ストーリー」に帰結するため、人によって合う合わないが顕著なゲームジャンルかと思います。

その点で言えば、口コミで評価を得たレイジングループは間違いなく名作ということになりますが、緻密な設定作成や思わず時を忘れて追ってしまう物語の組み立て方、また当時(2015年時点)としては新規性のあるテーマとストーリーなどは圧巻と言えます。

UIなども親切で非常に遊びやすい設計です。

ホラー・サスペンス・ミステリ、いずれかが好きな方はぜひプレイしていただきたいと思います。