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【PS4:Switch】「コーヒートーク」の感想・レビュー。多様性をデフォルメ化したノベルゲーム【ADV】

こんにちは。なかやんです。

今回、PS4・Switchから2020年1月29日に発売された「コーヒートーク」というゲームをプレイしたので、感想・レビューを書いていきます。

総プレイ時間は約6時間です。

「コーヒートーク」ってどんなゲーム?

「コーヒートーク」はインドネシアのインディーゲーム会社が製作したノベルゲームです。

夜間のみ営業するカフェ「コーヒートーク」のマスター兼バリスタとなり、様々な客に飲み物を提供しながら人間模様に触れていく、という割とまったりとしたゲームです。

物語は2020年のシアトルという設定なのですが、その住人は多種多様で、エルフやサキュバス、ドワーフなど人間以外の種族が社会に溶け込んでいるという面白い世界観になっています。

こういった飲食店を舞台にしたノベルゲームは、最近だと「VA-11 Hall-A(ヴァルハラ)」が話題になりましたが、このゲームも「VA-11 Hall-A(ヴァルハラ)」の影響をかなり色濃く受けています。

加えて開発者が日本のカルチャー(漫画・ゲーム・アニメなど)に造詣が深いようで、90年代の日本のアニメの雰囲気がデザインに用いられていたり、村上春樹のオマージュのような語り口調が度々用いられています。

客の要望通りの飲み物を提供し、絆を紡ぐ

「コーヒートーク」の世界の住人は多種多様な悩みを抱えており、カフェ「コーヒートーク」を駆け込み寺、心のオアシスとして利用しています。

そんなキャラクターたちにあたたかい飲み物を提供するのがバリスタの役目なのですが、分かりやすい注文からあいまいなリクエストまで、キャラクターの要望は様々で、どの材料を組み合わせれば、客が納得する飲み物を作れるのか考える楽しみがあります。

作れる飲み物の種類もかなり多く、カプチーノやエスプレッソといったメジャーなものから、STMJ(インドネシアの飲み物)のようなマイナーなものまで作ることができます。

ベース、メイン、サブの材料を選び、飲み物を作っていく。

世界各国の飲み物のトリビアが面白く、思わず色々な組み合わせを試したくなります。

客の要望通りの飲み物を提供することで、キャラクターごとのストーリーが進むようになっています。

ミルクを材料に使うとラテアートも可能。ちなみにクソムズイ。

異種族間の恋愛や差別といった、ゲームの世界観を利用した社会的問題にフォーカスするものから、現実世界の人間のような悩みをもつキャラクターまで、考えさせれる様々なストーリーが用意されています。

現実社会で広がる多様性をゲームでデフォルメした作品

前述の通り、「コーヒートーク」の世界の住人は人間以外の異種族も多く、現実世界よりも多様性を受容している世界観になります。

性別を超越した愛はもちろん、種族を超えた愛情も当たり前となっており、そこに潜む障壁などをフィクションでありながらリアルに描いています。

エルフの恋人がいるサキュバスの「ルア」。種族の違いから、互いの家から結婚を反対されている。

昨今現実世界でも広がりを見せる、LGBTやヴィーガンなどの多様性をゲームを用いてうまくデフォルメして表現しているなと感じました。

ヴィーガン(動物由来の血を飲まない)吸血鬼のハイド(左)と医療機関で働く人狼のガラ(右)

また種族は違えど、絆の紡ぎ方は人間と同じであったり、種族特有の悩みもどこか現実社会に共通点があったりと、世界観の構築がとても面白いゲームだと思いました。

ゲーム全体を通した雰囲気やBGM、全てが「チル」

舞台が深夜のカフェということもあり、ゲーム全体を通してシックな雰囲気で構成されているゲームです。

それを彩るBGMも秀逸で、ドビュッシーの「月の光」をオマージュしたチルアウトなど、カフェといえばジャズ的なイメージがありますが、それにとらわれない選曲がなされています。

思わず引き込まれる世界観もあいまって、短時間でリラックス・リフレッシュするのに適したゲームだと思いました。

ストーリーに関しても、終始フラットで、あくまでもキャラクターの日常にフォーカスした組み立てなので、気軽にプレイできます。

ローカライズが秀逸で海外産を感じさせない出来栄え

海外産のゲームをやるときに僕がどうしても気になるのが、翻訳が自然か否かなのですが、「コーヒートーク」は日本語のローカライズがとてもうまく、さすが日本のカルチャーの影響を強く受けている作品だなと感じました。

毎日の新聞が世界観を補完

海外特有のウィットにとんだジョークやシニカルな表現はありますが、全体を通して丁寧に作り込まれている感があります。

単なるノベルゲーにおさまらないギミックもあり

「コーヒートーク」には通常エンドとトゥルーエンドの二つが用意されており、客の要望通りの飲み物を提供し続けることで、トゥルーエンドまで行けるようになっています。

ですが、初見でトゥルーエンドまでたどり着くのはほぼ不可能であり、プレイヤーは一度は通常エンドを見ることになります。

ここで主人公であるバリスタの秘密の一端を垣間見ることができるのですが、これが非常にギミックを感じる作りになっていて、二週目でその謎がわかるのではないかと思わせます。

詳細は実際にやっていただきたいのですが、2週目でしか見れないイベント(会話)などもあり、周回プレイを楽しめる工夫がなされています。

「VA-11 Hall-A(ヴァルハラ)」ライクではあるが、全く別の世界観を構築した良作

「コーヒートーク」の良さは、全体を通したシックな雰囲気と、いい意味で起伏のないフラットなストーリー、そしてそこに芽生える小さな群像劇だと思います。

「VA-11 Hall-A(ヴァルハラ)」のようなケレン味は削ぎ落とされていますが、種の多様性をデフォルメ化してうまく描けており、思わずプレイヤーも考えさせれる内容となっています。

何よりドット絵の描写が美しい。

プレイに時間もかからず、短編小説を読むような清涼な読後感を味わえる作品なので、気になる方はぜひプレイして見てください。