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【PS4】「The Last of Us Part II」の感想・レビュー。多くのプレイヤーを葛藤させた結果、問題作扱いされた傑作【ACT】

こんにちは。なかやんです。

今回、2020年6月19日にPS4でリリースされた「The Last of Us Part II(ラスアス2)」をプレイしたので、感想・レビューを書いていきます。

なお、この記事にはストーリーの根幹に関わるネタバレがありますので、ネタバレを気にしない方のみ、ご覧いただくことをおすすめします。

「The Last of Us Part II」ってどんなゲーム?

ラスアス2は、ノーティードッグが開発した、アクションホラーの「The Last of Us(前作)」の続編となります。

ラスアス2にもアンチャーテッドのイースターエッグがあり、遊び心を感じる。

前作は、アンチャーテッドシリーズなどで有名なノーティードッグが手がけ、ストーリー性とアクション性の高さから、2013年のゲームオブザイヤーを総なめにし、リマスター版を含めると1,700万本以上の売り上げを達成したゲーム史に残る名作です。

もともと続編が作られる予定はなかったとのことですが、2014年に前作の追加コンテンツが配信されたのち、ラスアス2の制作が発表されました。

大人気タイトルの続編ということで、ゲーマーからの期待を多く集めたラスアス2でしたが、リリースから賛否両論が絶えない問題作として、メディアに取り扱われるようになりました。

ラスアス2に批判が絶えない理由

実際にプレイしたところ、これほどまでにプレイヤーを葛藤させ、感情を揺さぶるゲームは近年稀に見ないと個人的には感じているのですが、批判が絶えない理由もよくわかります。

以下に、なぜ批判が絶えないのか考えてみました。

前作の雰囲気を無に帰す、冒頭からのどんでん返し

前作をプレイした方なら、続編に対しても主人公のジョエルとエリーの本当の親子以上の信頼関係や、掛け合い、二人の旅の行方がどうなるのか、などを期待することでしょう。

ですが、開始早々前作の主人公だったジョエルが、エリーの目の前で謎の集団、そのうちの一人の女性、アビーによって惨たらしく殺害されます。

ラスアス2は「復讐」がテーマとなっており、ジョエルを殺害されたエリーが復讐のためにアビーとその仲間を追ってシアトルへ行く、というのが主なストーリーです。

ジョエルが死ぬというのはストーリー上仕方ないとしても、意図的にそのような演出をしているかのように、かなりあっさりと殺害されるので、プレイヤーはあっけに取られます。

ジョエルだけでなく、ラスアス2では主要な登場人物があっけなく殺される描写が非常に多いです。

この世界における人の命の軽さを表現しているのかもしれませんが、「えっ?こいつ死んだの?結構いいキャラだったのに…」と思わされることが多く、しかも淡々とストーリーは続くので、プレイヤーは置いてけぼりになりがちです。

話が少しそれましたが、序盤からあっけなくジョエルが殺害される展開に絶望する前作ファンが多いことは想像に難くないです。

中盤以降のまったく共感できないストーリー

ストーリーの序盤は、前述の通り、復讐心にかられたエリーとパートナーのディーナが、先にシアトルに到着しているジョエルの弟トミーを探しながら、アビーとその仲間たちの足跡を追う、というものになります。

このパートではエリーを操作し、感染者や、アビーの所属する組織「WLF」、そして狂信者の集団「スカー」との戦いが描かれます。

さらに、ストーリーの合間にジョエルとエリーの回想が差し込まれるので、エリーだけでなく、プレイヤーのアビーへの復讐心も募ります。問題はその後です。

エリーとジョエルの回想シーンは前作ファンを泣かせる。

シアトル到着から3日後、紆余曲折あり、ようやく仇敵アビーと対峙することになる局面で、突如アビーを操作するパートに場面が変わります。

つまり、エリーがシアトルで過ごした3日間、アビーは何をしていたかを追体験することになるのですが、このアビーパートに共感できないプレイヤーが非常に多いようです。

ジョエルを殺したことは到底許されないが、アビーにはアビーの理由もあるであろう、と言う事はわかります。

ただ、ほとんどのプレイヤーはこの状況でアビーに感情移入する事は不可能でしょう。

この局面であえてアビーパートをプレイさせるノーティードッグの仕掛けはとても面白いと思いましたが、嫌悪感を抱くプレイヤーがいることも確かです。

純粋に精神的に辛いストーリー

復讐に囚われたエリーは、アビーの仲間を次々に殺害していきますが、度重なる戦いの中でエリーの体も傷つき、果たしてこれはジョエルのためなのかと葛藤します。

前作ではあどけなさが残っていたエリーが、ボロボロになっていく様を見ていると、「エリー、もうやめてくれ…」と思わざるをえません。

また、エリーパートで何気なく殺害したキャラクターが、アビーパートでは主要人物となって登場するなど、あとあとになってプレイヤーに罪悪感を芽生えさせるシナリオ展開になっています。

「復讐」がテーマというだけあり、ストーリーは総じて暗く、またシナリオ展開上、悪天候での場面も多いので、陰鬱な気分にさせられます。

暴力表現も前作に比べてかなり頻繁に、しかも感染者に対してではなく、「人間」に対しての描かれ方がクローズアップされており、単なるゴア表現ではなく、あえて生理的嫌悪感を抱かせる描き方になっているように感じます。

また、敵勢力は軍用犬を使ってくるので、時として犬を殺さなければならないのですが、これが罪のない命をいたずらに奪うような気がして、人間を殺すより個人的には辛く感じました。

それでもラスアス2は傑作だと思う

このように批判されるであろうポイントは多岐に及びますが、僕はこのラスアス2をゲーム史に残るであろう傑作だと思っています。

Amazonのレビューでも星5つ(高評価)と星1つ(低評価)の割合がちょうど30%ずつ(記事執筆)という、面白い結果になっています。

ここまで評価が真っ二つに割れるゲームは最近では他にないでしょう。

しかも、戦闘等のシステムの問題ではなく、シナリオだけでここまで評価が分かれるというのは興味深いです。

むしろ戦闘面で言えば、「聞き耳」の重要度がさらに上がり、匍匐ができるようになるなど、自由度は上がっていますし、武器のカスタムやスキルの習得もエリー、アビーとそれぞれに分かれているので多様性もあります。

限られた物資の中、どのように敵を効率よく倒していくのかというアクション面での楽しさはむしろさらにパワーアップしていると言えるでしょう。

ストーリーに関しては、はっきり言って登場人物の誰も幸せにならない脚本ですが、冒頭にも述べた通り、登場人物の葛藤がプレイヤーにも伝わってくるようなギミックがなされており、陰鬱でプレイするのに体力がいりますが、とにかく先が気になる工夫が加えられています。

「痛み」とは何か、「復讐」に意味はあるのか、「正義」はどこにあるのか、このような難しい問いをゲームという体験を通してプレイヤー一人一人に投げかける、ノーティードッグの底力を強く意識する作品となっています。

ネガティブな感情をテーマとして扱えば反発があるのも当然ですし、むしろここまで容赦ない表現を用いてストーリーを描き切ったノーティードッグの表現力には脱帽せざるを得ません。

続編でここまで毛色を変えて来たことにより、低評価が多いのは事実ですが、ユーザーが望まないストーリーだからと言って駄作と決めつけるのはあまりに早計かと思います。

評価が揺れるゲームだからこそ、ぜひご自身でプレイしていただきたいと思います。