こんにちは。なかやんです。
2019年9月19日発売のスパイク・チュンソフトの新作、「AI:ソムニウムファイル」をクリアしたので、感想・レビューを書いていきます。
総プレイ時間は約25時間です。
この記事では基本的に「ネタバレ」はありません。
「AI:ソムニウムファイル」はどんなゲーム?
主人公の警察官・伊達鍵(だてかなめ)になり、連続殺人事件の推理・捜査を行うADV(アドベンチャーゲーム)です。
事件の証拠や手がかりを集めていく「捜査パート」と、重要参考人の「夢」の中に入り込んで記憶を辿っていく「ソムニウムパート」に大きく分かれてゲームを進めていきます。
捜査パートでは実際に主人公を動かすのではなく、視点移動でキャラクターやオブジェクトに焦点を合わせ、出てくる選択肢を選ぶ方式です。
ソムニウムパートでは、主人公の眼窩に埋め込まれているAI「アイボゥ」を操作し、オブジェクトに現れる選択肢を選ぶことで、手がかりを探っていきます。
基本的にはシナリオを読み進めていくノベルゲームの側面が強く、簡単なQTEなどはあるもののアクション要素は少なめです。
なお、メインシナリオは「メモリーズオフ」や「Ever17」などで有名な打越鋼太郎さんです。
打越さんは元々スパイク・チュンソフトの社員で、2018年に同じスパイク・チュンソフトの元社員の小高和剛さんらとトゥーキョーゲームスという会社を立ち上げています。
このトーキョーゲームスは、小高さんをはじめとしたダンガンロンパシリーズの開発陣(元スパイク・チュンソフトの社員)が多く在籍しており、この「AI:ソムニウムファイル」もダンガンロンパに近い感じの推理ゲームになるのかなと僕は期待していました。
「AI:ソムニウムファイル」の面白いところ
ストーリー
ストーリーはSF要素が強めで、いわゆる「多世界解釈もの」となっています。
「STEINS;GATE」などが好きな人にはすんなり世界観に馴染めるでしょう。
大きな一つの事件を解決するために、各登場人物のルートをすべてクリアする必要があり、当然一つのシナリオを終えただけでは事件の全貌すら見えてきません。
むしろ、序盤のシナリオを終えると新しい謎が増え、かえって事件が難解になるという面白さがあります。
また、伏線の張り方も秀逸で、あるルートで貼られた伏線が別ルートで回収されるなど、ルートを一つ一つ攻略していくことで、世界観やストーリーにうまく引き込まれていきます。
キャラクター
ADVにしては個別ルートが用意されているキャラクターは少なめです。
ですが、それだけに個性は強く作られており、すべてのキャラクターがストーリーに作用してきます。
主人公の伊達はシティハンターの冴羽獠のような三枚目のキャラクターで、いい意味でゲームを始める前のイメージを裏切られました。
ともすると終始シリアスになりがちなストーリーを、この伊達のキャラクターとアイボゥとの掛け合いでバランスが保たれています。
ゲームシステム
捜査パートでは、人以外にオブジェクトにもフォーカスすることができ、稀に会話が発生することもあります。
一見何でもないようなオブジェクトでも、思わずチェックしたくなるような要素となっています。
ゲームの目玉であるソムニウムパートでは重要参考人の夢、つまり記憶の中を探索することになるのですが、現実ではあり得ないような選択を取ることで手がかりが見つかったりするなど、従来の推理ゲームでは考えられないような非合理的な選択を迫られることがあり、新鮮でした。
また、ルート分岐がわかりやすく、ソムニウムパートでの行動で別ルートが解放される仕組みとなっています。
フローチャートから、すでにプレイ済みのソムニウムパートは何度でもプレイ可能なので、「複雑な選択肢からフラグが立つ」のような面倒臭さはありません。
また、フローチャートがかなり細分化されているので、特定のイベントを見るために同じルートを何度も周回プレイする必要はありません。
この辺りはADVをあまりやったことがない人にも優しく設計されているなと思いました。
「AI:ソムニウムファイル」の疑問点
疑問点というか、ユーザーによって賛否が分かれそうなポイントを書いていきます。
ギャグパートに下ネタが多め
主人公の伊達がスケベなので、ギャグパートにふんだんに下ネタが用いられます。
ダンガンロンパシリーズのようなあくまで可愛らしいレベルの下ネタですが、数少ないアクションシーンでもエロ本や下着を使うシーンが多いので、下ネタが好きではない人にはそら寒さを感じるかもしれません。
※key作品のギャグパートにもちょっと似ているなと思いました。
ですが、ストーリーの核心をつく終盤になってくるとシリアスな場面も多くなり、逆に序盤のギャグパートの能天気さが恋しくなってくるので、メリハリはつけられています。
ソムニウムパートが難しい
ゲームの目玉であるソムニウムパートですが、重要参考人の夢の中に入りこめる時間に制限が設けられています。
オブジェクトに対して特定の選択を取ることで制限時間が減っていき、時間内に手がかりを得ないとゲームオーバーとなります。
脱出ゲームのような感覚で、特定の選択肢を選ぶと、他のオブジェクトに影響があり、解決に繋がっていきます。
ですが、ソムニウムパートは夢の中なので、現実ではあり得ないようなことが起こり、また現実ではあり得ないような行動をとることがストーリーを先に進める鍵となります。
これがとても難しく、選択と結果の因果関係が予想できないので、同じソムニウムパートを何度か繰り返して最適解を発見していく必要があります。
結果ソムニウムパートは「死にゲー」「覚えゲー」的な要素が強く、面倒臭さをおぼえる人もいそうだなと思いました。
Z指定(18歳以上のみ対象)であるということ
「AI:ソムニウムファイル」は18歳以上のみを対象としたZ指定(CERO Z)のゲームです。
この時点でプレイできなくなる層が出る上に、前述の下ネタなどは18歳以上にウケるとも思えず、シナジーは薄いです。
CERO Zならもっとシリアスに振ったシナリオにしてもいいのかなと思いました。
確かに猟奇的な殺人が数多く出てくる上に、出血シーンなどもありますが、特段にグロテスクというわけでもないので、何とかCERO CかDくらいに収まる表現にできていればより多くの方がプレイできたのではないかなと思いました。
人間の記憶、AI(愛)とは何かに迫る良作
ストーリー全体の謎をうまく隠しながら、ルートごとに明かされる謎。
秀逸な伏線の張り方とミスリード、魅力的なキャラクター、プレイしやすいゲームシステム、などなどノベルゲームとしてみればとても良いゲームだと思います。
ただし、もっと推理を楽しみたいという方には少し物足りないボリュームかもしれません。
プレイ時間も25時間前後で全てのシナリオを見ることができるので、土日などの休みでさっくりプレイしたいADVとしては最適ではないでしょうか?
人間の記憶とは何なのか、真実の愛とは何かを扱う良作です。
ぜひプレイしてみてください。