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【PS・Switch】「戦場のフーガ」の感想・レビュー。子供達の絆が絶望を打ち払う【SLM】

こんにちは。なかやんです。

今回、2021年7月29日にPlayStation、Switchからリリースされた「戦場のフーガ」をプレイしたので、感想・レビューを書いていきます。

クリアまでの総プレイ時間は約12時間です。

「戦場のフーガ」ってどんなゲーム?

「戦場のフーガ」は、サイバーコネクトツーが25周年記念作品として開発・販売を行ったシミュレーションRPG(ダウンロード専用ソフト)です。

サイバーコネクトツーといえば、「.hackシリーズ」が有名ですが、「テイルコンチェルト」や「Solatorobo(ソラトロボ)」などのゲームからなる、「リトルテイルブロンクス」シリーズも、知る人ぞ知るゲームとしてゲーマーから愛されていました。

なお、「リトルテイルブロンクス」とは、獣人族が住む浮遊大陸を舞台に繰り広げられるサイバーコネクトツーのゲーム群の世界観の総称であり、ファイナルファンタジーで言うところの「イヴァリースアライアンス」のようなものです。

今回リリースされた「戦場のフーガ」も、「リトルテイルブロンクス」シリーズに位置付けられており、時系列としては2010年リリースの「Solatorobo」の前作にあたります。

「リトルテイルブロンクス」の魅力は、デフォルメされた獣人族(イヌヒト・ネコヒト)と独特のデザインのメカニック、そして洗練されたSF的世界観にあります。

キャラクターの柔らかさ、温かみのあるデザイン、一部の世界観などは「ロックマンDASH」に近しい部分があり、同ゲームの雰囲気が好きな人には馴染みやすいかと思います。

禁断の武器、「ソウルキャノン」

「戦場のフーガ」のストーリーは、浮遊大陸「ガスコ」の「プチ・モナ」という村が、突如として軍事国家「ベルマン帝国」の侵略を受けるところから始まります。

村に住む大人たちが次々にベルマン帝国の捕虜となる中、突然ラジオから流れ始めた女性の声に従ってなんとか難を逃れた村の子供達数人は、要塞のような巨大な戦車「タラニス」を発見し、村人を解放するためにタラニスに搭乗し、ベルマン帝国と戦うことを決意する、というのがあらすじです。

戦闘のシステムとしては、いわゆるタイムラインバトルというものが採用されており、道中に配置されている敵を倒し、状況に応じてルートを選びながら、タラニスのHPがゼロにならないようにステージを進めていくという、ややローグライク要素もあるものとなっています。

ステージには分かれ道もあり、敵が強いが良いアイテムを回収できるルート、敵が弱く安全に進むことができるルートを選択できる

戦闘システムの詳細については後述しますが、「戦場のフーガ」で最も特徴的なのは、どんな強敵でも一撃で葬り去ることができる「ソウルキャノン」の存在です。

強力なソウルキャノンのエネルギー源は子供ひとりの命、つまりソウルキャノンを使えば、選んだ子供の命が一つ失われ、当然二度と戻ることはありません。

禍々しい力を放つ、ソウルキャノン。

ソウルキャノンはいつでも使えるわけではなく、ボス戦時、タラニスのHPが少なくなり、ピンチに陥った極限状態の時のみ使用出来る様になります。

よくわからない兵器に搭乗する子供たち、生体エネルギーを元とする武器、絶望的な状況、なんだか鬼頭莫宏の「ぼくらの」に共通するような悲壮感がゲーム全編を通して漂っています。

ちなみに、ゲーム開始時のチュートリアルで必ずソウルキャノンを一度使うこととなるので、子供達だけでなく、プレイヤーも大きな喪失感に苛まれることになります。(なお、チュートリアルが終わると、謎の力が働いてソウルキャノンを使う前に戻されます)

子供達のためにも、もう二度とソウルキャノンを使わないようにしようとプレイヤーは心に誓うでしょうが、前述の通り、ソウルキャノンを使えば楽にステージを進めることができるのも事実なので、ジレンマを感じることとなるでしょう。

シンプルだが奥深い戦闘システム

タラニスには三つの砲台があり、それぞれ2名まで子供を乗せることができます。

各砲台で使用できる武器はマシンガン、グレネード、キャノンの三つです。

  • マシンガン…命中率が高いが、威力が低い。飛行系の敵ユニットに有効。また、敵の防御力を下げる効果を持つスキルを持つ。
  • グレネード…中程度の命中と威力でバランスが良い。状態異常を付与する効果を持つスキルが多い。
  • キャノン…高威力だが命中率が低い。全体攻撃が可能なスキルを持つ。

全ての子供達は、この中からあらかじめ決められた一種類の武器を使うことができます。

また、敵ユニットにはそれぞれ武器ごとに弱点があり、弱点を突くと相手の行動順が遅くなります。

こうして、敵の行動順を遅らせながら、効率的にスキルを使い、いかにタラニスの消耗を抑えてステージをクリアできるかが、このゲームのキモとなります。

また、砲台に子供を2名まで乗せることが出来ることにももちろん意味があり、二人の「親愛度」によって「協力必殺技」が使えたり、キャラクター固有のサポート効果を得ることができたり、様々な恩恵があります。

例えば、攻撃力が高いが命中率が低いキャノンの子供に、命中率が上がるサポート効果を持つ子供を合わせたりなど、戦術は子供達の数だけ広がります。

なので、使用すると子供が減ってしまうソウルキャノンは、戦術性を狭めてしまうという点でもデメリットがあると言えます。

なお、「親愛度」はステージ上にいくつか設けられている、タラニス内でのイベント「インターミッション」で上げることができます。

インターミッションは各ステージごとに回数が限られており、行動数にも制限があるので、先のことを考えて行動する必要がある。

このように仲間との絆を紡ぎながら、希望を捨てず、ベルマン帝国に立ち向かう子供達の姿には、健気さを覚えずにはいられません。

前作「Solatorobo」にもつながる、緻密な世界観

「戦場のフーガ」をさらに楽しむ要素として、世界観を補完する多くのTipsが挙げられます。

タラニスとはなんなのか、ベルマン帝国の目的とは、子供達を導くラジオの声の正体など、ゲーム中のストーリーでもある程度回収されますが、Tipsでさらに奥深くまで知ることができます。

僕は個人的にこうしたゲーム内のTips要素が好きなので、この辺りはとてもワクワクしました。

また、前述の通り、「戦場のフーガ」は過去作(時間軸的には未来)、「Solatorobo(ソラトロボ)」へ繋がるゲームとなっています。

もちろん「Solatorobo(ソラトロボ)」をプレイしていなくても十分楽しめる作りになっていますが、過去作のファンであればより楽しめる工夫がなされています。

「戦場のフーガ」のTipsは、「Solatorobo(ソラトロボ)」の複雑な世界観を補完する役割も果たしているので、「戦場のフーガ」をプレイしてみて、世界観や細かい設定が気になった方はTipsをチェックするといいでしょう。

絆の力で絶望に抗う子供達の物語

シンプルながら奥深く、効率的に敵を倒せるとパズルが解けたような爽快感が残る戦闘システム、子供達の編成によって無限に広がる戦略性、先が気になるストーリーと実は複雑な世界観など、総じてバランスよくまとまっているゲームだと感じました。

一方、肝心の戦闘中の編成画面のUIが悪い、デバフの効果がわかりにくいなど、細かい問題点はありますが、いい意味で多くの人が楽しめるようなゲームバランスとなっており、親しみやすいキャラクターデザインもあいまって、お勧めしやすいゲームと言えます。

ソウルキャノンを使わず、絆の力で絶望に抗う子供達の物語がどのような結末を迎えるのか、ぜひゲームで確かめてみてください。